テーマ1 地方工場の衰退

 大手電機メーカの本社で働き出し、数年後に地方工場に出向した。大企業では一般的なジョブローテーションである。現場を経験するという意味もあった。

 

数十年前、多くの会社が地方に工場を建設した。日本経済がまさに拡大期にあった。メーカーは労働力不足を解消でき、地方政府にとっては雇用が増える。その当時はいいことずくめだったのだろう。

 

その後、日本経済の低迷や、中国を始めとする新興国の台頭により、 地方工場の多くは、大手電機メーカにとって負担になっていった。私が勤めたメーカも例に漏れなかった。詳しくは以下の負のスパイラルにより、地方工場は負担となっていく。

    1.製造コストは新興国が安い ⇒
    2.大量生産する製品は中国等で生産 ⇒
    3.一部品種のみ国内工場で生産 ⇒
    4.工場の稼働率が低下し、さらに製造コスト悪化 ⇒ 1に戻る
  
工場もこのままではジリ貧になり、いずれは閉鎖となってしまう。そこで、2つの努力を行う。

努力A.社内製品だけでなく外部顧客からの生産受注を目指す(いわゆるEMSビジネスである)。

努力B.生産技術向上や、生産革新(トヨタ方式等)により、新興国並に製造コストを下げる。

 

ここでは努力Aについて述べる。Bについてはテーマ2"生産技術とビジネスモデル"にて述べる。端的に結果を言えば、努力Aも下記のように品質悪化とコスト上昇となり、成功しなかった。

  1.外部顧客を受註する事で、少量多品種になっていく⇒
  2.品種毎の管理が追い付かなくなる⇒
  3.正社員が管理業務を行い、生産現場は請負会社に任せる ⇒

・品質:社員が現場を分からなくなり品質問題が起きる
・コスト:品種数が増えただけ、管理コストが増大する。

 

上記のようなEMSビジネスの失敗は私が勤務していた工場に限らず、日本国内ではどこでも見れる現象なのだろう。